2014年10月31日

『カンガルー・ノート』安部公房


ある朝、脛の下から上に蟻走感が走った。

毛が一本もなくなっていた。


三ヶ月ほど前、会社で《提案箱》なるものが新設され、

全社員が月に二回、思い付きでも何でもいいから、

何か新商品を提案するよう義務づけられた。

義務なら仕方がない、

ほとんど冗談のつもりで走り書きのメモを投函。

内容は一行、《カンガルー・ノート》。

たった、それだけ。

ところが、思いがけないことに、

その落書きメモが採用されてしまったのである。


翌朝、脛の毛穴からかいわれ大根が生えてきた。

訪れた医院では手に負えないと医師から

硫黄泉による温泉療法がいいと言われ、

鎖骨の下に通した点滴チューブと

尿道を貫通しているカテーテルにより身動きがとれないなか、

自走することもできる特殊なアトラス製ベッドで

レールの上を走り続けることになるのだがー。


次から次へと謎の展開が押し寄せてくる安部公房らしい

不思議な世界が満載なストーリー「カンガルー・ノート」。

パラパラと少しだけ読み直しましたが

じっくりと再読したい作品。

1995年2月1日文庫本出版/2000年7月20日第10刷版購入


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posted by のっぽ at 07:03| Comment(0) | 安部 公房 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月30日

『もの思う葦』太宰治


49編からなる太宰治のエッセイ集「もの思う葦」。

Tは前期作品、Uは前期作品の中でも格言的要素を中心とした作品、

Vは主に自作、郷里、創作の随筆、Wは文学者への批評、

Xは既成文学者に対しての批評と

大きく5つのコンセプトからなるカテゴリーに分けて収録。

得意な女々しさや愚痴っぽい文体だけでなく、

溜まっていた鬱憤が爆発したかのような批判が凄い。

特にWの「川端康成へ」は悪口を書かれたこと、

そして定かではないが盗作されたことなどを名指しで痛烈に批判し、

「如是我聞」では、これまた悪口を言われたと

志賀直哉も完膚なきまでに貶している。

よくもここまで出てくるなと逆に感心するぐらいである。

ただ太宰治の性格や人間性を知る上では重要なエッセイ集でもある。

約十八年前と随分昔に読み、思い出しながら斜め読みをしての感想ゆえ、

しっかりと再読したいですね。

1980年9月25日文庫本出版/1996年8月15日第35刷版購入


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posted by のっぽ at 07:36| Comment(0) | 太宰 治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月29日

『きりぎりす』太宰治


昭和十二年(1937年)から昭和十七年(1942年)までの

五年間に書かれた中期の短編14作品、

「燈籠」「姨捨」「黄金風景」「畜犬談」「おしゃれ童子」

「皮膚と心」「鷗」「善蔵を思う」「きりぎりす」

「佐渡」「千代女」「風の便り」「水仙」「日の出前」を

収録した太宰治の「きりぎりす」。

太平洋戦争が始まる二十八歳から三十三歳の時期という

不安で暗い時代背景だが、

前期や後期の前衛的ながらも排他的で破滅的な作品に比べ、

心理や感覚を多彩に表現した作品が多く感じられる。

ただし、妻の姦通などから裏切られ生きる気力を失い

麻薬中毒による錯乱、精神病院への収容など

著者が生活落伍者として世間から扱われている

心情を綴った冒頭の「燈籠」や

第三の自殺未遂である水上温泉での

心中未遂事件を題材にしている「姨捨」など相変わらずですが、

これが太宰治作品の真骨頂かもしれませんね。

思い出そうとほんの一部を少しだけ読み返してみましたが

じっくりと再読したい作品です。

1974年9月30日文庫本出版/1995年2月10日第43刷版購入


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posted by のっぽ at 07:44| Comment(0) | 太宰 治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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