2015年04月03日

『虚像の道化師』東野圭吾


七つの短編からなる東野圭吾のガリレオシリーズ「虚像の道化師」。


第一章z「惑惑す(まどわす)」。

新興宗教「クワイの会」の信者が5階の道場から飛び降りた。

教祖は信者に指一本触れないものの、

自分が「強い念」を送ったため信者が飛び降りたと自首する。

これは事件なのか自殺なのか。

所轄ではこんな珍妙な事件は初めてだと苦慮していたが、

この手の事件に慣れている刑事がいるそうだと知り

警視庁捜査一課へ泣きついてきた。

やり玉に上げられた草薙刑事は今回も同級生である

帝都大学物理学者の湯川に力を借りて難事件に挑む。


第二章は「透視す(みとおす)」。

銀座のクラブ「ハープ」のホステス、アイこと相本美香が

荒川沿いの草むらで遺体となって発見された。

4ヶ月前、草薙刑事が何度か行っことがあり、

不思議なトリックを扱うアイを使って

湯川を驚かそうと訪れていた。

捜査をしているうちに徐々に浮かび上がる犯人像。

それと同時に相本美香がなぜホステスをしているのか

なぜ家族と縁遠くなっているのかも知ることとなり、

感動の結末を向かえる。


第三章は「心聴る(きこえる)」。

耳鳴りに悩まされていた脇坂睦美の上司・早見達郎部長が

自宅マンションから飛び降り亡くなった。

自殺ということで捜査は終結に向かいつつあったが

二ヶ月後、同じ会社に勤めている加山幸宏が

心療内科を受診しようとした病院で傷害を起こしている時、

たまたま風邪で居合わせた草薙刑事に取り押さえられる。

二つの事件の共通点は幻聴。

三たび湯川の知恵を借り、難事件へ挑む。

草薙刑事の同期で優秀ながら所轄にいる北原の思いと

犯人の醜い嫉妬や身勝手な考えがリンクされていることで、

ストーリーに厚みがでて面白い。

最期の草薙刑事のセリフや本音がイカしている。


第四章は「心聴る(きこえる)」。

東京エンジェルスの柳沢投手の婦人・妙子が

スポーツクラブの駐車場で殺された。

戦力外通告を受けていた柳沢は、

事件で担当になった草薙からあることが切っ掛けで、

仲間の後押しにより調子を取り戻そうと

湯川を紹介してもらう事になる。

しかし、生前に妻から言われていた現役に拘らず

スパッと引退し第二の人生を歩むという

結婚前からの約束により練習をしながらも心は揺れていた。

捜査が進む中、不可解な行動が明らかになるとともに

妻の本音を知ることになる・・・。

第二章の「透視す」と同じくハートフルな物語。

そして湯川が普段滅多に見せない熱く、人間臭さが

全面的に出ている珍しいストーリーでもある。


第五章は「念波る(おくる)」。

長野県に暮らしている童話作家の御厨春菜と

青山にあるアンティークショップ経営者で姉の若菜は双子。

胸騒ぎにより姉が心配だと叔母の御厨藤子から電話させ、

若菜の旦那である磯貝知宏を自宅へ向かわせると

後頭部と額側面を鈍器のようなもので殴られ血を流し倒れていた。

春菜は警察へテレパシーでわかったと伝えるが

調書にテレパシーなどと書き難い草薙は例によって湯川を引きずり込む。

今回も湯川らしからぬ優しさにより、早期に決着をする。


第六章は「偽装う(よそおう)」。

大学時代にバトミントン部で一緒だった谷内の結婚式のために

東京から3時間かけて山中のリゾートホテルに着いた。

大雨の中、土砂崩で道が寸断されたり、

有名作詞家の家で猟銃と絞殺で二人が殺された

殺人事件が起こったりと天災や事件が重なり、

町長になった谷内から懇願され、

草薙は殺人事件の現場検証に立ち会うことになる。

草薙が事件現場を撮影した写真を湯川のパソコンで確認しているところ

湯川はある不自然なことを見つけてしまうー。

殺人事件として捜査が始まる前に

またまた湯川らしからぬ粋な計らいにより、

ひとりの人が過ちを犯さずに事件は解決する。

傘を貸すなど良い事はしておくべきですね。


第七章は「演技る(えんじる)」。

劇団「青狐」の演出家・駒井良介が劇団の稽古場で殺された。

胸には演目で使用されるナイフが刺さっており、

犯人は関係者に絞られた。

しかし、手袋を使っていることや携帯電話の偽装など

計画性が高かったにも関わらず、

なぜ犯人が絞れやすいナイフが残されたのか。

あることで「青狐」ファンクラブ特別会員になっている湯川が

珍しく自ら事件に携わっていく。

犯人の殺害動機や方法よりも、

それを越えたある人物の思考が恐ろしい。


どの作品も楽しめるエンターテイメント作品に仕上がっていました。

2015年3月10日文庫本出版/2015年3月10日第1刷版購入





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posted by のっぽ at 16:22| 東野 圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年03月14日

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』東野圭吾


一言で言うと面白かった。

伊坂幸太郎の時間軸を超え、リンクし合うストーリー展開と

重松清の流星ワゴンのようなSFファンタジーが組み合わされたような

人間の暖かさが感じられる内容は、

二人の作品からインスパイアされたような印象を受けた。

マンネリしてきていたミステリーから脱し、

大胆な発想で「東野圭吾の作品か?」と思わせる小説が時折でてくるが

今回の作品もその一つです。


物語は、児童擁護施設「丸光園」で育った3人組が真夜中、

泥棒をして逃走中、車が故障してしまう。

度老棒に入る社長を尾行中に知った空き家の「ナミヤ雑貨店」で

朝まで身を隠す事にする。

そんな真夜中で空き家のシャッターの郵便口へ手紙が投函された。

事情を探ろうと家の中を調べ、スマホで情報を集めた結果、

以前、店主が郵便口と牛乳箱を使って悩み相談をしていことを知り、

店主がしていたように返事の手紙を牛乳箱へ入れたことから

不思議な出来事が次々と起こり始めるー。


登場人物が沢山出てくるが構成が分かりやすく、

読み返す事なくスラスラと読めるのもいい。

また、リンクしているどのストーリーも思いやりと愛が感じられ、

内容が濃く素晴らしい。

そんな東野圭吾の「ナミヤ雑貨店の奇蹟」は

過去と未来が繋がった様々な時代背景が登場することで懐かしく、

20代だけでなくいろいろな世代も楽しめる

老若男女問わないお勧めの作品です。

2014年11月25日文庫本出版/2014年12月15日再版購入





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posted by のっぽ at 14:48| 東野 圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年11月07日

『マスカレード・イブ』東野圭吾


マスカレード・ホテルに続く第2弾、

東野圭吾の「マスカレード・イブ」。

2人が出会う前の物語が収録。


一話目の「それぞれの仮面」は、山岸尚美の物語。

ホテル・コルテシア東京に就職して4年が経ち、

先月、希望だったフロントオフィスに配属された。

そんなある日、元プロ野球選手のマネージャーとして

宿泊の手続きをしていた人物が元カレ・宮原だった。

その宮原から部屋に緊急に呼び出されると

呼び寄せた自殺未遂もしかねない女性が

行方不明になったと打ち明けられるー。

簡単に推測できてしまうストーリーだが

山岸尚美の人柄や宮原の人の良さにホッコリさせられる作品。


二話目は警視庁捜査一課に配属された新田浩介の「ルーキー登場」。

ホワイトデーの夜に起きた殺人事件が舞台。

昨夜、数多くの飲食店を経営する実業家・田所昇一がランニング中、

自宅近くの建設現場内で背中と腹部を刺されて死亡していた。

建設現場内では待ち伏せしていたように

同じ銘柄のタバコの吸い殻が5本落ちていたが

新人の新田の推理によって犯人のカムフラージュと気がつく。

そして怪しげな男・横森仁志に辿り着くが、

思わぬ方向へと進んで行くー。

新人の頃から出来る新田浩介が描かれていると同時に、

「思い込み」もしくは「マインドコントロール」という

オカルト宗教やオレオレ詐欺など

現代社会に巣くっている問題を想起させる作品に仕上がっています。


三話目は山岸尚美の「仮面と覆面」。

怪しげな四十を過ぎた五人組の男たちが

チェックインする際にタチバナサクラの部屋を尋ねられる。

答えないのはもちろんだが気になりインターネットで調べると

名前と生年月日しかわからない27歳の女性作家と判明。

しかし、宿泊としてきたのは

五十歳前後の小太りの中年男・玉村薫だった。

だが、山岸尚美の洞察力により

さらに秘密のベールが隠されていることが暴かれるー。

微笑ましい結末がいいですね。

読み終るとタイトルの「仮面と覆面」が効いているなぁと感心。


四話目はついに山岸尚美と新田が登場する

表題の「マスカレード・イブ」。

教育係&応援としてオープンしたホテル・コルテシア大阪で

フロント業務をこなしている山岸尚美は、

薔薇の香りの女性客と眼鏡をかけ四十代であろう身体の引き締まった

知的な二枚目の男性の仮面に気づく。

一方、東京の泰鵬大学理工学部教授・岡島孝雄が

教授室で殺された殺人事件の捜査に当たる新田浩介は、

准教授で共同研究をしている南原定之に不審を感じる。

事件の夜、男は大阪にいたとアリバイを主張するが、

なぜかホテル名を言わない。

殺人の疑いをかけられてでも守りたい秘密とは何なのかー。

二人が出会う前の、それぞれの物語。

結局、二人は直接合うことはないが絡み方が絶妙。

お洒落なエンディングに仕上がっています。


エピローグは、「マスカレード・ホテル」の大事な場面だけど

読んだ方々には必要ない気がする。かえって興ざめしてしまう。

2014年8月25日文庫本出版/2014年9月9日2版刷購入





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posted by のっぽ at 07:13| Comment(0) | 東野 圭吾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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