2014年10月27日

『性的人間』大江健三郎


3編が収められた大江健三郎の「性的人間」。

表題でもある「性的人間」は、

二十九歳の青年Jとその妻・蜜子、Jの妹で二十七歳の彫刻家、

中年男のカメラマン、若い詩人、二十歳の俳優、

十八歳のジャズ・シンガー、サワ・ケイコの7人は、

短編映画のいくつかのシーンを撮るために

ジャガーに乗って耳梨湾にある別荘に向かう場面から始まる。

そこで彼らは乱交が始まり、

その様子を村の子供たちに見られてしまうー。

そしてシーンが変わり、

Jは国会議事堂前駅で性犯罪をおこした

大柄な少年を老人、中年男とともに捕らえた。

《厳粛な綱渡り》という詩のために痴漢をしたという詩人の少年を

老人とJは助けてしまう。

Jはかつて、短編映画を作った時、

後になって知った別れた妻の情人だった若い詩人を思い出し、

この詩人に興味を持ち始めたからであった。

ある朝、痴漢をとなることに定めた。

反・性的な自己処罰の欲求にかられていた。

おたがい名前も知らないJと老人と少年の3人による痴漢が始まるー。


その他、左翼思考が蔓延している学生たちと一緒に性的快楽も含め、

左翼へ傾倒しつつあったが、ある出来事を切っ掛けに右翼へと目覚め

政治や天皇に陶酔する少年を描いた「セヴンティーン」。


商会の調査室で働いている長身の青年が

四匹の猿と八畳の洋室で暮らす恐るべき孤独感を描いた「共同生活」。


どれもインパクトのある問題作であり、じっくりと再読した作品。

1968年4月25日文庫本出版/1998年5月25日第48刷版購入


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2014年10月26日

『芽むしり仔撃ち』大江健三郎


太平洋戦争の末期、狂気の時代。

取るにたらない悪事をおかした者たちや

非行少年傾向持っていると判断されただけの者たちを監禁し続ける

「感化院」に入所させられている者たちも、

空爆が激化した末期には、院児の親元引取りが始まったが

大半の家族たちが厄介者である院児を迎えに来なかったため、

教官たちは山奥の村に集団疎開することにした。

疎開先の村で少年たちは強制労働を強いられるが、

疫病が発生した為に少年たちを残したまま出入り口を封鎖し、

村人たちは避難してしまった。

強制された監禁状況下で残された少年たちは、

自ら愛と友情の「自由の王国」を建設しようとする。

少年たちは閉ざされた村の中で自由を謳歌するが、

村人たちの帰村により思わぬ方向へと進んでいくー。

理不尽な迫害、非人間的な扱いや無惨な描写など

弱者の様々なニュアンスが描かれた大江健三郎の「芽むしり仔撃ち」。

パラパラと搔い摘んで再読したのですが

しっかりと読み直したい作品。

1965年5月31日文庫本出版/2000年1月20日第40刷版購入


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2014年10月25日

『死者の奢り・飼育』大江健三郎


6つの短編からなる大江健三郎の「死者の奢り・飼育」。


1話目は、文壇的処女作でもある「死者の奢り」。

医学部の死体処理室で解剖の教材になる死体を

水槽に移すアルバイトをする、死体にまつわるストーリー。


2話目の「他人の足」の舞台は、脊椎カリエス患者の療養所、

未成年者病棟。ある快楽にみちて各々が暮らしていた。

しかし、1人の男がきてから凡てが少しづつ変わり始めたー。


3話目は戦中、墜落して捕らえられた一人の黒人兵を

寒村で獣のように飼う芥川賞受賞作「飼育」。

興味をもった3人の子供たちが徐々に心を許していくのだったがー。


郊外のキャンプへ帰る酔った外国兵が

バスの車中で行った愚行に屈辱を味わう。

傍観していた乗客の一人が証人になるから

警察に届けようと向かうことになる4話目の「人間の羊」。


谷間の小さな村へ外国兵を乗せた一台のジープがやってきた。

夕方、涼しくなるまで村で休むと靴を脱いで洗車をはじめるが

靴が無くなっていた。犯人探しを始める中、

一人の少年が通訳の前に現れた5話目の「不意の唖」。


最期の6話目は、朝鮮戦争へ向かう米軍兵士に脱走を呼びかける

パンフレットを配るという危険な作業を弟とする「戦いの今日」。

そこへ本物の脱走兵が転がり込んできたがー。


15年以上前に読んだため、所々搔い摘んで再読したが

どの物語も不変的な魅力が詰まったおり、

いつかしっかりと再読したいと思わせた作品。

1959年9月25日文庫本出版/1999年6月5日第63刷版購入


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